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遺言書がある場合の遺産分割と障害者控除

Q 先日、祖父が亡くなりました。父も以前に亡くなっているので、代襲相続により祖父の相続人は孫の私32歳と兄35歳(身体障がい者3級)の2人です。

 祖父は生前に公正証書遺言を作成していました。遺言書には、全ての財産を私に相続させる旨の記載があります。遺言書の通り全て私が相続していいのでしょうか?相続財産は、預金が7,000万円程度です。


A 遺産が7,000万円で相続人が2人ですので相続税は約320万円程度かかります。2人が相続する場合は、お兄さんが障がい者なので障害者控除を受けることができます。

 また、お兄さんの負担する相続税から控除しきれなかった場合には、あなたの相続税からも控除できます。しかし、障害者控除を受けるためには、お兄さんが財産の一部でも相続しなければなりません。

 したがって、あなたが全ての財産を相続した場合には、障害者控除を受けられないことになります。


 障害者控除の税額控除は一般障害者の場合、85歳になるまで年10万円ですので、お兄さんの年齢が35歳とすると、(85歳-35歳)×10万円=500万円が控除額になります。相続財産の一部でもお兄さんが相続すれば、2人の相続税の総額が320万円ですので、お兄さんは相続税はかかりませんし、あなたの相続税もかかりません。

 では、遺言書がある場合に、その内容とは異なる遺産分割をすることができるのかですが、民法では遺言書によって、最大5年間遺産分割協議を禁止することができます。しかし、この禁止がされていなければ、相続人と遺言書による受遺者の全員の同意があればいつでも遺言書に従わずに自由に遺産分割協議をすることができます。もっとも、遺言執行者が選任されていて、その者が相続人以外の場合は、遺言執行者の同意も必要です。

 なお、遺言書に従い分割した場合や遺産分割協議により分割した後に、再度の遺産分割協議で再分割した場合は、税法上の贈与になりますので贈与税が課税されます。再分割の際は気を付けてください。

 また、遺言書に従って、相続財産の全部を相続した場合には、お兄さんには最低限相続できる部分の遺留分がありますので、遺留分侵害請求によって相続財産の一部を請求される可能性があります。