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相続した借金は払わないといけない?

Q 父がU町で事業をしていましたが1か月前に亡くなりました。母は5年前に亡

  くなり相続人は私だけです。父の事業上の借入金が約300万円あります。財  

  産は自宅が時価で約1000万円程度で、預金はほとんどありません。父の残  

  した借入金を私が払わないといけないのですか? 

  

A そのまま相続すると銀行借入金はあなたが払うことになります。しかし、お

  父様が亡くなったのを知ってから3か月以内に家庭裁判所に「相続放棄」の  

  申し立てをすれば、払わなくてよくなります。   

  

 お父様の土地建物を引き継ぐのであれば銀行借入金もあなたが返済していか

りません。しかし、今回であればあと2か月以内に家庭裁判所に「相続放棄」の

申述をすれば相続人ではなくなりますので、お父様の土地建物を引き継がないこ

とになりますし、銀行の借入金も引き継がなくてよくなります。

 ただし、相続権が次の順位の人に移りますので親戚等に迷惑がかからないよう

気を付けてください。

 今回の場合ですと、相続放棄をした場合、相続権は、祖父母に移ります。祖父

が亡くなっている場合は、お父様の兄弟姉妹に移ります。お父様の兄弟姉妹に

惑がかからないように、弁護士等に相談して、全員が相続放棄をすることも伝

ておいてください。


 また、別の方法として「限定承認」というものもあります。これはお父様の財

を引き継ぐ代わりに債務も財産の価格を限度として引き継ぐというものです。

限定承認は財産の価格よりも借入金等の負債の額が多いときに利用されることが

あります。

 例えば、相続財産に100万円の土地建物と100万円の宝石があり、他に500万

円の借金がある場合に、土地建物100万円と宝石100万円を相続し、借金も200

万円だけ相続するというものです。

 そして、土地建物だけが欲しい場合には上記財産が借金の返済のために競売に

かけられる時に「先買権」という権利を行使して優先的に購入することができま

す。

 限定承認は、便利なように思えますが、結局、財産の限度で借金を返済しなけ

ればならなくなりますし、相続財産の目録を作成しなければならず、相続人が複

数人いる場合は全員が限定承認をしなければなりません。ある相続人は限定承

認、他の相続人は放棄ということはできません。

 このように融通が利きにくいことからあまり利用されることはないです。


 あと2ヵ月しかありません、このまま放置しておくと2か月後には単純承認とい

全ての財産を相続しますという効果が発生してしまいます。銀行は教えてくれ

せん、我々が協力します。


         

民法第915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)

 1.相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以

    内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければなら

    ない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭

    裁判所において伸長することができる。


 2.相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることが

    できる。


民法第920条(単純承認の効力)

 相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。


民法第921条(法定単純承認)

 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。

  一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及

    び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでな                         

    い


  二 相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかっ

    たとき。


  三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全   

    部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相      

    続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放 

    棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この

    限りでない。

 

民法第922条(限定承認)

 相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。


民法第938条(相続の放棄の方式)

 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。


民法第939条(相続の放棄の効力)

 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。