Q 夫が3年前に亡くなり子どもは、長男・次男・三男の3兄弟です。私は自宅で
長男とその妻と一緒に暮らしています。その自宅の裏に夫から相続した私名
義の畑がありますが今は何も耕作していません。長男は、その畑を宅地に変
えて、長男名義の家を建てると言っています。
A 親の土地に子どもが家を建てる場合には、次ようなパターンがあり、それぞ
れの問題点があります。
① 親名義の土地に子どもが家を建てる場合
子どもが、親名義の土地を使用貸借(無料で借りること)して家を建てた場合、
土地は親名義、家は子ども名義という状態になります。よって、土地は親である
あなたの所有のままなので相続財産となります。つまり、あなたが亡くなった場
合、土地について他の弟さんたちにも相続権が発生します。
そうすると、長男さんが住み続けるのであれば、遺言等で土地の所有権につい
て定めておかないとトラブルが発生する可能性があります。
② 土地を子ども名義に変えて、子ども名義の家を建てる場合
土地の名義を親であるあなたから子どもである長男さんに名義を変えるとなる
と、あなたが長男さんに土地を贈与するということですので贈与税がかかる可能
性が出てきます。贈与税額は相続税評価によって算出されます。さらに、家を建
てるために贈与するということは畑が宅地に転用されることが前提となりますの
で、宅地並みの評価によって贈与税が課税されることになります。
もっとも、相続時精算課税制度という制度を利用すると土地の評価額が2500
万円までであれば贈与税はかかりません。この制度を利用すれば土地に贈与税は
かかりませんが相続の時に相続税の対象となります。
一般的に②のパターンが多いようです。また、住宅資金の贈与については、贈
与税の非課税制度もありますので、親が子どもに土地を渡すのではなく住宅資金
の援助をするパターンもあります。
そして、土地を贈与するにせよ住宅資金を援助するにせよ、他の弟さんたちに
了解を得てから贈与するようにしてください。他の弟さんたちにも配慮しておか
ないと、あなたが亡くなった後に遺産分割等で揉める原因となるからです。
特に二次相続(相続した後に相続人が亡くなってその子等がさらに相続する場
合)の場面になると、兄弟姉妹の仲が良くても、その子たちによる遺産の争奪戦
が発生するケースもありますので注意しておくことも大切です。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、60歳以上(贈与を行う年の1月1日現在)の父・
母・祖父祖母に相続が発生した時の相続税を計算するときには精算課税により贈
与を受けた額を加算して相続税額を計算します。ただし、累計額が2500万円を
超えた場合に前払した20%の贈与税額は、相続税額から控除します。また相続
税がかからない場合は、前払した贈与税は還付になります。
つまり、相続時精算課税制度の利用で生前に財産を移転しても相続税の節税効
果はありませんが、遺産分割で揉めないためにも前もって財産を分割しておくこ
とができます。